弁護士コラム

遺留分侵害額の算定方法

2017.06.22 / 弁護士コラム・「遺言相続」

遺留分が、いくら侵害されているのかを算定するためには、以下のプロセスを経る必要があります。

まず①遺留分算定の基礎となる財産額を算出し、それに②個別的遺留分の割合を掛けた後、③特別受益の価額を控除して個別的遺留分額を算出した後、さらに④遺留分権利者が相続によって得た財産額を控除した後、相続債務の分担額を加算することによって遺留分侵害額が算定できます。

①遺留分算定の基礎となる財産額=「被相続人が相続開始時に有していた財産の価額」+「生前に贈与していた価額」−「相続債務の価額」

②個別的遺留分の割合=「総体的遺留分の割合」×「法定相続分の割合」

相続人が、直系尊属のみである場合、被相続人の財産の3分の1(民法1028条1号)
その他の場合、被相続人の財産の2分の1(民法1028条2号)

③個別的遺留分額=①×②-「特別受益の価額」

④遺留分侵害額=③-「遺留分権利者が相続によって得た財産額」+「相続債務の分担額」

【具体例】

被相続人(父)が、8000万円の資産と2000万円の負債がある状態で、長男に全ての財産を相続させる旨の遺言書を遺して亡くなったとします。また、被相続人の相続人は、妻と子どもが二人であるとし、生前妻に対して4000万円、長男に対して1000万円、二男に対して1000万円の贈与をしていました。
遺言書によって、妻と二男は具体的にいくらの遺留分が侵害されているでしょうか。

~妻の場合~

①まず、遺留分算定の基礎となる財産額を算出します。
8000万円(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額)+6000万円(生前に贈与していた価額)−2000万円(相続債務の価額)=1億2000万円

②次に、個別的遺留分の割合を算出します。
今回は相続人に妻や子どもがいるために、総体的遺留分の割合は2分の1となります。
そして、妻の法定相続分は2分の1です。
そのため、妻の個別的遺留分の割合は4分の1となります。

③さらに、個別的遺留分額を算出します。
1億2000万円×1/4-4000万円=-1000万円

この時点で、個別的遺留分額がマイナスになってしまっているために、本件において、妻の遺留分は侵害されていないことが分かりました。

~二男~

①遺留分算定の基礎となる財産額は妻の場合と同様、1億2000万円です。

②次に、個別的遺留分の割合を算出します。
今回は相続人に妻や子どもがいるために、総体的遺留分の割合は2分の1となります。
そして、今回二男の法定相続分は4分の1です。
そのため、二男の個別的遺留分の割合は8分の1となります。

③さらに、個別的遺留分額を算出します。
1億2000万円×1/8―1000万円=500万円

④最後に、遺留分侵害額を算出します。

③500万円+500万円(=2000万円×1/4、相続債務の分担額)=1000万円

以上より、本件において二男は、1000万円の遺留分を侵害されていることが分かりました。

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