弁護士コラム

離婚問題 – 3つの視点から見る8つのポイント「お金の問題」

2017.06.22 / 弁護士コラム・「男女問題」

3つ目の視点「お金について」の4つのポイントをご紹介します。

⑤ 財産分与

我が国では、夫婦別産制を採用しており、婚姻中に自己の名で得た財産は、その名義人の財産と考えることとなっています(民法762条1項)。

しかし、離婚時にまでかかる考え方を貫くと、夫婦のどちらかの名義に財産が偏っている場合、自己名義の財産を持っていない側は、酷な状況に追い込まれてしまいます。また、仮に名義上財産がどちらか一方に属していたとしても、その財産は、夫婦がお互いに助け合って築いた財産であるはずです。

そのため、離婚時に、夫婦が協力しあって築いた財産(共有財産)を分け合う必要があり、これが(清算的)財産分与と呼ばれるものです(民法768条)。

したがって、財産分与の対象となる財産には、結婚前から持っていた財産や相続によって得た財産等は含まれません。

なお、財産分与する際、現在の実務では、財産形成に対する双方の寄与を平等と推定し、共有財産を半分ずつに分けるというのが主流になっています。もっとも、夫婦の一方が特別な才能や努力によって、多額の収入を得ているようなご家庭については、例外的に折半とならない可能性もございます。

⑥ 慰謝料

慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償金です。

慰謝料発生の原因として、代表的なものは不貞行為(浮気)や暴力等です。

精神的損害は、他人から見えるものではなく、人によって感じ方というのは様々であり、その評価は極めて困難であるため、金額の算定は非常に困難です。そのため、大きな争いとなることもありますが、紛争を解決するという観点から双方が合理的な判断をする必要性の高い部分であると思います。

⑦ 年金分割

年金分割とは、婚姻期間中の被用者年金の保険料納付実績の一部を分割し、もう一方の配偶者が受け取れるという制度です。

これは、あくまでも保険料納付実績が変更されるのであって、年金分割を求めたからと言って、離婚時に金銭的給付が受けられるというものではありません。

また、国民年金については、年金分割の対象とならないため、配偶者が自営業者である場合には、そもそも年金分割することが出来ない場合もあります。

⑧ 婚姻費用

婚姻費用とは、別居中(例外的に同居していても家計が分離されてしまっているような時)に、配偶者の一方が、他方の配偶者及び未成熟子の生活の維持のために支払うべき費用のことです。

これまでの7つのポイントが、離婚時又は離婚後に決めるべきものであったのに対し、婚姻費用は、離婚するまでの生活に関するものである点で大きく異なります。

婚姻費用の金額についても、養育費について述べたのと同様、双方の収入を基準として、その上で、個別の事情を考慮して若干の調整を加え、決定されます。もちろん、婚姻費用についても、当事者双方が納得している場合には、このような決定方法による必要はありません。

 

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